こんにちは、渋谷区桜丘町の歯医者「あけぼの歯科医院」の陣之内です。
噛み合わせを探求する学問である「咬合学」に関して、前回は共通項があるというお話をしました。
数あるスタディーグループのフィロソフィーの中でも似通った考えなのが「前歯と奥歯の役割」です。
これらは理想的な噛み合わせと言われる状態で、という前提のもとのお話です。
皆さんは「前歯と奥歯の役割はそれそれ何ですか」と聞かれてうまく答えられるでしょうか?
そもそも歯というのは食べる=消化する為の「咀嚼」する事だけでなく、見た目の「審美性」、言葉を喋る為の「構音」等様々な機能が求められる組織です。
今回の問はその中でも「噛み合わせ」に限った問だと思って下さい。
「前歯は咬み切る歯、奥歯はすり潰す歯」は正解ですがそれは「咀嚼」においての答えになりますので今回は別分野になります。
噛み合わせにおける前歯と奥歯の役割、それは簡単に言うとこうなります。
「奥歯はカチカチ咬む時に当たって食いしばりの力を負担する歯、前歯はギリギリ歯ぎしりする時に当たって横揺れの力を負担する歯」
そうです、噛み合わせにおける歯の役割は「力の負担」を軸に考えるのです。
噛み合わせとは突き詰めると口腔内にかかる力をどのように効率よく分散して健康な状態を長持ちさせるか、という所に行き着きます。
統計的には瞬間でkg単位の力がかかると言われている口腔内でこの力の分散がうまくいかないと当然歯は長持ちしません。
理想的な噛み合わせにおいて、奥歯はカチッと咬んだ時に力の負担を担いますが前歯は約12μmの隙間を保って当たらないと言われています。(ナソロジー)
顎を前後に歯ぎしりした時には前歯全体が擦れて左右に歯ぎしりした時は犬歯が当たり、その間奥歯は当たっていない状態になります。
このように奥歯が主役の時は前歯がお休み、前歯が主役の時は奥歯はお休み、という相互互助関係にある事でお互いの負担を分散しているのです。
(それぞれ専門用語でアンテリアカップリング、アンテリアガイダンス、アンテリアディスクルージョンといいます)
この互助関係の噛み合わせを「Mutually Protected Occlusion(ミューチャリープロテクティッドオクルージョン)」と言い、この部分が多くの咬合学のグループでも共通して追及しているところだなと感じました。(PMSフィロソフィー等においては一部相違がありますが)
それを達成する過程や術式こそ違いはあれど、目指す理想的な嚙み合わせ=ゴールはほぼ同じと言っていいでしょう。
次回はこれらが崩れた場合はどんな不具合が起きやすいのか、というお話をしていきます。